2011年11月12日土曜日

パッシング行為のなぞ


 昨夕、車を運転していると、対向車から「パッシング」を受けた。車をよくご存じない方のために補説すると、ハンドル付近のライトレバーを手前に倒すと、その間だけヘッドライトが点灯する。その操作を2~3回繰り返して、「パ・パ・パッ」という感じで対向車に合図を送るのが「パッシング」である。

「パッシング」は英語では‘passing’だ。これは、「通過中」や「追い越し」を意味する。したがって、語源的には高速道路等で、前方の車に「追い越しますよ」「追い越すから横にどいて」というような意味合いを伝えるのに用いられたのが、どうも「パッシング」の起源であるようだ。

 しかし、この「パッシング」は実はさまざまな役割で用いられる。対向車のパッシング、ぼくが若い頃の岡山県南部事情で言えば、二つの意味があった。一つは「この先で警察がネズミ捕りしてますよ」の警告。そしてもう一つは、昼間なら「ライト点けっぱなしですよ」、夜なら「ハイビームになってますよ」のサインである。

 それで思い出したのが、パッシングの東西差という問題である。例えば、交差点であなたは右折しようとしている。向こうから直進車が近づいてきてパッシングをする。それは何の合図か。それが関東圏と関西圏では異なるというのだ。関東圏では「お先にどうぞ」の意味でパッシングする人が多く、関西圏では「こっちが先に通り抜けるぞ。むやみに曲がるな」という意味でパッシングする人が多いのだそうだ。

 昨日の対向車のパッシングはいったい何であったのだろう。そろそろ暗くなっていたのでスモールランプは点けていたが、別にハイビームになっていたわけではない。だとすると警察の速度取り締まり(いわゆる「ネズミ捕り」)かと思ったが、結局、そうでもなかった。

 知り合いが「やあ、こんにちは」あるいは「こんばんは」の意味で送ってくれたパッシングかもしれない。しかし、現在乗っている車にそれほど特徴があるわけでもなく、ましてやうす暗い夕暮れのことだ。運転席にいるのがぼくであることをはたして見分けることができたのであろうか。

 実はぼくの車に向けてパッシングしたのではなく、先行車両や横から飛び出して来そうな自転車に向けた合図であったかもしれない。パッシングは多義的な「記号」として使用されている。だからこそ、パッシングを受けるたびに推論が必要だ。ぼくの謎はますます深まるばかりだ。

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